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大分県 事業承継・引継ぎ支援事例
当センターにて支援した事業者様の事業承継・引継ぎ事例を紹介しています

竹田市大字炭竃371番地 tel.0974-64-5815

えとう印刷
父の事業を受け継ぐことを決めたのは三人姉妹の長女。紙離れは加速度を増し、個人がインターネットなどで安価に印刷発注できる現代にあって、顧客ニーズに柔軟に対応したサービスを提供できるのは若い後継者だからこそ。両親が築いた歴史の続きを、自分らしく重ねていく。
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信念をもって続けてきた仕事を
娘たちらしく進化させてほしい。

親/衞藤勝志さん

女性が働きやすい環境を
自分なりに作っていきたい。

子/河野なつ美さん

企業概要
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現代表が市内印刷会社に勤務後、2004年10月に独立開業。印刷から製版まで社内で一貫製作し、丁寧な仕事ぶりには定評がある。家族中心の経営を行い、3姉妹のうち長女と次女が経営に参画している。

承継年表

2021年センター登録、2023年事業承継予定
▼2021年8月 当センターが行った専門家による個別相談会に、事業承継の方法や承継に伴う法人化について相談に来会。
▼2021年11月 地区担当エリアコーディネーターが、課題・問題点を再度確認し、専門家派遣に向けて調整。
▼2022年1月~5月 当センターの専門家派遣により事業承継計画書の策定支援を受ける。
▼2023年1月 父・勝志さんから、長女・なつ美さんへ事業を承継予定。

一度は地元を離れたからこそ、家業の見方が変わった

 「将来、えとう印刷で一生懸命働きます」。小学校の卒業式の時、そう発表した衞藤家の三姉妹。「お小遣いにつられた(笑)」としながらもその言葉は現実となり、今まさに2人の娘が両親とともに家業の現場に立っている。
 「お客さんのことを第一に考えて、よりいいものを提供するのが起業当時からの信念。時代や仕事のやり方が変わっても、それさえ忘れずにいてくれればと思っています」と父・勝志(62歳)さんは語る。2004年に地元竹田市で『えとう印刷』を創業し、20年近い歴史を作り上げてきた。
 「私が印刷業界に入ったのは24歳のとき。当時はバブル期で業界自体も潤っていましたが、バブル崩壊後は他と同様に景気は冷え込む一方でした」。加えて、小説や漫画、新聞さえも携帯電話で読める時代に突入し、”紙離れ”も一気に加速。印刷受注が徐々に減っていくことを実感しながらも、「ずっと応援してくれるお客さんがいるから、ここまで続けてこられた」と勝志さんは振り返る。
 時代の変化はあっても、「紙の需要はなくならないから事業を継続できる」。そんな勝志さんの想いを受けて、長女の河野なつ美さん(29歳)が承継を決意した。
 「親が地元に根ざした仕事をしていることを子どもなりに窮屈に感じて、一時は違う将来を考えたりもしました。でも、外の世界を知ったからこそ地元の良さや親の苦労に気づけるようになったのかなと思うんです」。後継者として周知されたことで地元の各種団体等への参加の機会も増え、いつしか「会社の顔」という意識と責任感が芽生えていった。

自らの経験を生かし、女性目線で事業を進める

 制作現場では常に新しさを追求してきた勝志さんは、現在2代目となるオンデマンド印刷機も、なつ美さんの入社と同時期に導入。「早く仕上げてほしいとか、少ロットで印刷したいなど、地域のニーズに応えやすくなってきたのも、機械を入れてくれたおかげだと思っています」と語るなつ美さんは、オンデマンド印刷を主軸に次なる事業展開を模索。次女のあゆ美さん(26歳)とともにSNSなどでの情報収集にも積極的に取り組んでいる。
 「母親目線で考えるといろんなアイデアが浮かんで、子育て中のママたちに求められるサービスも提供できそうです」。新たなターゲット層の開拓を目指し、アクリル板やシリコンなど従来の紙とは異なる素材に印刷できるUVプリンターの導入も決めた。急激に成長していく姿を間近で見守る母の聖子さん(58歳)も「私たちが元気なうちは、できるかぎり支えてあげたい」と、次世代の可能性にエールを送る。
 「最初は身の丈に合わない仕事も多く、出産時期も重なったりして、心も体も本当に辛い時期があったんです。でも、結婚や出産、育児などの変化にとらわれず、女性が働きやすい環境を作っていけるのも、経験した私だからこそできること。楽しく笑顔で仕事に向き合えば、今よりもっとお客さんに喜んでもらえる会社になれるんじゃないかなって思います」。

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地元に根ざした印刷会社として、地元とともに真摯に歩んできたことを、数々の制作物が物語っている。

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「初めて購入した機械は断裁機。今も大切に保管しています」と勝志さん。

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なつ美さんの入社と同時期に購入し、現在2代目となるオンデマンド印刷機が、丁寧かつ「早く、安く」を実現。

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独学でデザインを学んだなつ美さんとあゆ美さん姉妹。努力の成果が、長年の取引先からの評価にも表れてきた。

承継後の事業展開を見据え、新たな方向性を提言

代表者の衞藤勝志さんには3 人の娘さんがおり、長女のなつ美さんに事業の引継ぎを計画。引継ぎの時期や手続き方法、資産・負債等の引継ぎ方、また、承継を機に法人成りについても検討したいため当センターに支援の依頼があった。計画的に承継を進めていくことと併せて、承継後の新たな事業展開を模索する必要性があることから、専門家派遣による事業承継計画書の策定支援を行い、円滑な引継ぎと将来の事業方針についてアドバイスした。

時代の流れを的確に読み、新たな方針を明確にした

当初は創業20周年を迎える2024年に承継を予定していたが、新たな売上の柱を早急に立ち上げることを考え、後継者のなつ美さんが2023年1月から事業を引き継ぐ(開業)と決定。承継後の法人成りについても、課題として引き続き検討していくこととした。現在の印刷業界は、デジタル化の進展によって「紙離れ」が拡大し、印刷物が大幅に減少していることから、従来のオフセット印刷からオンデマンド印刷へのシフトを目指していく方向性が明確になった。

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