大分県 事業承継・引継ぎ支援事例
当センターにて支援した事業者様の事業承継・引継ぎ事例を紹介しています
玖珠郡玖珠町大字森1058-2 tel.0973-72-0301
有限会社伊勢屋
玖珠産米」の絶対的なブランド力を広めるために、独自路線のサービスを展開してきた父と、新商品の開発に意欲を燃やす息子。米どころの米屋として、生産者と消費者に寄り添い続けてきた米穀小売業『伊勢屋』は、業界では珍しい"若返り"に向けた計画が順調に進行している。
商売人としての柱を忘れず、自由に挑戦し続けてほしい
親・江藤正八さん
将来のために、まずは「米を売るプロ」になることを目指す
子・江藤優さん
企業概要
昭和31年創業。「玖珠産のお米を食し、感動していただく」を経営理念に、玖珠産の特A品質米を販売。現在、3代目となる後継者を中心に、伊勢屋ブランドの確立と事業拡大を図っている。
承継年表
2021年 > 玖珠町商工会と九重町商工会が共同開催した個別相談会に江藤正八さんが参加。
2021年11月 > 玖珠町商工会より事業承継支援の依頼を受け、地区担当エリアコーディネーターが訪問。事前ヒアリングを行い、承継に向けての課題・問題点を抽出。
2022年4月~9月 > 3 回の専門家派遣により、事業承継計画書の策定支援を実施。後継者の江藤優さんも同席し、承継の流れ、課題の確認を行う。
2027年2月 > 江藤正八さんから江藤優さんへ事業を承継予定。
苦労した経験を生かし、計画的な事業承継を目指す
伊勢屋』が創業したのは1956(昭和31)年。現在、米穀小売業とプロパンガス、老人福祉施設の委託給食の3つの事業を手掛けている。要となる米は、卸問屋以外に生産者から直接仕入れるルートを確立し、今では契約農家からの仕入れ率が問屋を上回った。
二代目の江藤正八さん(70歳)は、東京での社会人生活を経て、27歳で家業を継いだ。
「まだ先の話だと思っていたところ、創業者の父が病に倒れたため急遽帰郷。引き継ぎもままならない中、これまで通り家業を継続するには、すべての仕事を自力で覚えるしかありませんでした」。
その経験は、後継者である次男・優さん(33歳、写真左)への早めの承継計画づくりにつながった。
「私は長男だったし、家業を継ぐのが当たり前だったが、子ども達にはやりたいことをやってほしいという気持ちもありました。自分の代で終わってもいいかなと思ったこともあります。でも、彼が強い意志をもって継ぐと言ってくれたので、それなら私が元気なうちになるべく早く、引き継ぎの準備を進めたほうがいい。彼自身も若いうちに学び経験を積むことで、自信と責任につながると思いました」と正八さんは語る。
経営者の高齢化や後継者不在が深刻な業界にあって、「若い承継者がいる」というのは大きな強みになる。長女の家族も福岡から移住し、夫の内山祐介さん(40歳、写真中央)が『伊勢屋』に入社したことで、家業の将来性はより説得力を増した。
玖珠産米のおいしさを強みに、「選ばれる」商品を展開
地元愛が強く、家業を継ぐことにも迷いはなかったが、一方で将来の不安や危機感もあったという優さん。「食の多様化で米離れが進苦労した経験を生かし、計画的な事業承継を目指す玖珠産米のおいしさを強みに、「選ばれる」商品を展開み、高齢化や人口減少は改善の兆しもない。マイナス要素ばかりで田舎の米屋が商売を続けられるのか、続けるためにはどうすればいいのか、という思いはありました」。
東京で働きながら、ヒントを得るために米屋やギフト専門店巡りを自分に課していた優さんは、一つの答えを見つけた。それが、贈り物として選ばれる、付加価値の高い商品を作るということだ。
日本穀物検定協会が実施する全国食味ランキングで「特A」評価を獲得する玖珠産米の、絶対的なおいしさを知ってもらうには食べてもらうのが一番。「不特定多数の人が味わうきっかけになり得る」ギフトに可能性を感じ、2016年に帰郷して早々、オリジナルギフトの開発に着手した。
SNSでの告知や商談会への出品などで県外でも注目を集めている少量サイズの「キューブ米」は、「ひとめぼれ」のほかに「ひのひかり」「つや姫」の比率を変えた用途別の「オリジナルブレンド米」をラインナップ。地元の風景や名所をラベルデザインした商品や、お気に入りの写真をパッケージにできるオリジナルキューブ、雑穀米など、次々と湧き出るアイデアを玖珠産にこだわりながら形にしていった。将来的には生産も担えるようにと、米作りの勉強も始めている。
承継予定は2027(令和9)年。「つながり」と「絆」を商売の柱として守り続けた両親の姿を見て育ち、「継ぎたい」と思うようになった優さんと、彼を支える家族の挑戦は始まったばかりだ。
こだわりの玖珠産を詰めたキューブ米と雑穀米。新米や新商品の告知など、SNSでも積極的に情報発信している。
色彩選別機で選別した白米をさらに目視で確認したのち、容量ごとに袋詰めの作業を行う。
異物混入を防ぎ、「安心・安全」を提供するための色彩選別機。経営革新計画承認後、経営革新加速化補助金を活用して購入した。
石畳の城下町で創業した『伊勢屋』。地域と生産者、消費者に寄り添いながら、家族経営で商売を続けてきた。
支援ポイント:行動力と熱意に将来性を見出し、事業の安定と発展をサポート
現社長の江藤正八さんは、次男の優さんへの事業承継に向けて「方向性を固めておきたい」意向があったため、支援を実施。事業承継計画書作成支援にあたり、円滑な株式移転等の課題解決や引継ぎ後の成長戦略を踏まえた計画書としました。経営革新に挑戦する後継者はアイデアを商品化する行動力と熱意、そして家族を含め周囲が一丸となって後継者を支えていく関係性に「伊勢屋」の魅力と将来性を感じました。