大分県 事業承継・引継ぎ支援事例
当センターにて支援した事業者様の事業承継・引継ぎ事例を紹介しています
佐伯市鶴見沖松浦1384-2 tel.0972-33-0274
株式会社漁村女性グループめばる
魚食普及、付加価値、地域活性、雇用。4つの目標を掲げて、”漁村のお母さんたち”が立ち上げた水産加工グループが、全国的に高い評価を得るまで成長したのは、ぶれずに突き進んできた証。さらなる飛躍の夢を託せる後継者と巡り合い、新たな道を開拓していく。
発展させるためには変化が必要。
この人なら、と確信しました。
前代表/桑原政子さん
唯一のおいしさには、
長年の漁村の知恵が生きていた。
代表取締役/小谷晃文さん
企業概要
2004年創業、2011年に法人化して合同会社となる。様々なメディアで紹介される「ごまだし」は全国に根強いファンをもつ。現在、新商品開発や販路拡大にも積極的に取り組んでいる。
承継年表
2020年センター登録 、2022年事業引継
▼2020年10月 大分県事業承継・引継ぎ支援センターに登録。
▼2020年10月~ 譲渡先候補との譲渡条件の検討、マッチング支援を開始。
▼2021年7月 工場長として小谷氏が入社。
▼2021年10月 桑原代表と小谷氏の間で事業承継に関する意思確認。
▼2022年2月~ 顧問税理士による譲渡スキーム、条件の調整。事業譲渡契約書等の作成支援を開始。
▼2022年3月 事業譲渡契約を締結。株式会社に組織変更。
漁村の女性の元気さと伝統の味を強みに邁進
佐伯市の特産品「ごまだし」を全国区に押し上げるために中心的な役割を担ってきた『めばる』。2004年、代表の桑原政子さん(73歳)を含む3人の”浜のお母さん”で発足し、当初は活魚や鮮魚を朝市などで販売するのが主な活動だった。
「いざ、魚を売ってみると、三枚おろしができない人の多さに驚いたんです。生の魚を買ってもらえないのなら口元まで運べる商品を作ろう、と考えたのが加工品を始めるきっかけになりました」。そこで、当時はまだ県内はおろか佐伯市内でも限られた地区でしか知られていなかった「ごまだし」の商品化に着目。祖母や母がいつも作ってくれていた味、そして自らも日常の家族の食卓で作ってきた味。ずっと地元に受け継がれてきた味を、『めばる』の主力商品「佐伯ごまだし」として世に出した。
全国的に知られるようになったのは、さまざまな商談会・イベントへの参加など、知名度がまったくない時代から懸命に普及活動を続けてきた努力の証。調味料選手権での最優秀賞獲得など、あらゆる方面で高い評価を得た。
「将来、もっと大きくなる可能性があると感じているからこそ、今までの〝おばさん力〞だけではダメ。変わらなければと思って、後継者を探すことにしました」。
一時は地元事業者との交渉を試みたが合意に至らず、その後、2021年夏から工場長として『めばる』に勤務していた小谷晃文さん(42歳)に承継を打診。入社間もない頃から働きぶりを評価し、「この人なら」と確信していた小谷さんに事業を託した。
唯一の旨さを受け継ぐ”研究者”の新たな挑戦
「桑原さんとは根本的な価値観が似ているような気がしていて、そのお眼鏡にかなうならやってみようと思ったんです」。
大学で水産養殖を学んだ後、大手水産加工メーカーに勤務していた小谷さん。「ファンがたくさんいる会社であり商品なので、まずはその魅力とは何なのかを自分の腑に落ちるまで徹底的に調べました」。まずは、研究者としての知識と経験をもとに、「ごまだし」を分析。そこで得たおいしさの理由は、「魚のイヤな臭い(忌避物質)の元になる皮や内臓を徹底的に取り除いている」ということ。新鮮な魚が原料であることは第一条件だが、その扱い方そのものが、唯一の旨さを実現しているのだという。「そんな難しいことは考えたことがなくて、ただ、早く捌いて、焼いて、皮をとって、身をほぐしてっていう昔からの作業を続けてきただけ」と桑原さん。漁村の知恵と経験が、小谷さんから見れば、図らずも他社の商品との差別化につながっていたということだ。作り手の姿が見える安心感と、「絶対的なおいしさ」という自信の裏付けになった。
漁村の女性たちが生き生きと元気に働ける場所を守り、旬の魚を使った季節商品を開発して地域活性へと結びつける。顧問となった桑原さんのパワーをも受け継ぎ、『めばる』を将来的にもっと発展させるという使命を確実に、誠実に、実現していく。
定番の「ごまだし」と「ふりかけ」。ハモやカマスなど旬の魚で作る季節商品「ごまだし+(プラス)」も好評だ。
「ごまだし」をはじめ、多彩な商品を作る加工場。衛生管理や原料の扱い方なども小谷さんにとってはお手の物だ。
親子ほど年が離れた小谷さんと桑原さんだが、「仕事への向き合い方や価値観が似ている」からか、距離感が絶妙。
年間約6万本を製造しているロングセラーの「佐伯ごまだし」。
持分譲渡、組織変更を完了し、さらなる事業拡大に向け支援
2020年10月、後継者不在のため地元事業者との事業承継案件としてセンターに支援を依頼。最終的な条件が合わず破談となったが、当時、工場長の小谷氏へ承継を打診したところ了承を得たことで再度支援を開始した。登録時点でスキームの構築及び譲渡条件の検討を実施していたことで、小谷氏との交渉は顧問税理士を中心に順調に進み、2022年3月に持分譲渡を完了。事業拡大に向けて株式会社へ組織変更し、6月には桑原氏と顧問契約を締結した。
承継後の事業運営強化のため、前代表との顧問契約を進言
初めての「合同会社」の事業譲渡案件であり、対応に注意。実務を顧問税理士が行い、センターは具体的なスケジュール立案、状況把握、関係者への連絡、進捗管理を中心に支援を行なった。他に、承継後の事業運営について、前代表との顧問契約を進言し、体制づくりを支援。これまで順調に販路を拡大してきた「ごまだし」をはじめ、さらなる事業拡大に向けて現在、承継者・被承継者が二人三脚で邁進中だ。